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『超・殺人事件』 -推理作家の苦悩ー [東野圭吾]

無題

緻密な作品を書く東野圭吾氏。
イメージを覆す軽~いノリの短編集。8作から成り立っています。

超税金対策殺人事件
超理系殺人事件
超犯人当て小説殺人事件(問題篇、解決篇)
超高齢化社会殺人事件
超予告小説殺人事件
超長編小説殺人事件
魔風館殺人事件(超最終回・ラスト5枚)
超読書機械殺人事件

多くのミステリー小説に共通なことは、
ミステリー小説は、フィクション(架空の話)であり、実際に殺人が起きているのではないこと。
(念のため)
この8編。(殺人を扱ったミステリーを作る)側が主人公の話なのです。
「(常識を)超えている」 ノリで、頭に「超」が付いています。
殺人事件を考えて書く作家は、時代に即して本当に大変なのだなぁと思いました。
(私は、ミステリー作家にはなりません。いえ、なれません!)

8編あるので、8人のミステリー作家が主人公の話です。
ひとつひとつ、簡単なあらすじと感想を書いておきましょう。
(ネタバレ有りですので、お嫌な方は読まないで下さい)








---------- ネタバレ 注意 ------------------------------------- 


★超税金対策殺人事件
印税で豪遊してしまった作家夫婦。払うべき税金が足りないため、(税金対策に)振り回される作家の話。
あまりの税金の額に卒倒する妻。手に入れた領収書を経費とするため、なりふり構わぬ税金対策を講じることに。
旅行や衣服宝石、他家の改装費、夕食のスキヤキまで…
経費とするために、執筆途中の小説の話の展開まで大幅に変更することになる。

地下鉄で読んでいて、あまりの可笑しさに笑いを堪え切れなかった作品。
私は、完全なる超挙動不審者でした。(恥)


★超理系殺人事件
理系の本を見過ごすことが出来ない主人公。
購入するのは文庫本になってからという信念を曲げて、
「超理系殺人事件」 なるハードカバー本を購入してしまう。
家まで待ちきれずに喫茶店で読み始めたが、その難解なこと。
脈絡不明な専門用語の乱発に苦戦しながら読み進めていくと…

「真性理系人間」 と 「似非(えせ)理系人間」
耳が痛いような話です。
理系的な知識に対して分かった気持ちになることが、テロに繋がるとしたら…
その発想と展開には唖然とするばかり。凄すぎます。


★超犯人当て小説殺人事件(問題篇、解決篇)
作家に呼び出された4人の編集者。
作家の長編新品の掲載権をめぐって犯人を当てレースに参加することに。
問題篇と解決篇。その登場人物がシンクロしているのです。

フィクションだと分かっているのに… 戸惑ってしまいます。
問題篇が2篇。解決篇が1編。ここがポイントなのでしょうね。(笑)


★超高齢化社会殺人事件
作家が高齢化している出版業界では作家の痴呆化が進みつつあり、編集者の苦労は絶えない。
読者も高齢化しているために、不都合は無いのかも知れないが…
犯人と被害者、生存者と死者の区別もアヤフヤな状態のため、その辻褄を合わせるのが編集者の仕事ともなっている。

編集者も読者も作家も… 皆が高齢化すれば、恐くない。ということかも。
超高齢化社会。超天国に近い社会のようです。


★超予告小説殺人事件
小説に書かれた職業の女性が同じ手口で殺される。
殺人予告小説発売のような事態に、警察からは小説を書かない要望出される。
世間の話題を呼び本は売れることになる。
売れる本を書くための殺人者との協調が殺人者の濡れ衣を着ることになる。

欲望と正義の間で動く人間心理。
欲望に勝つことが出来るか… 超問いかけられている気がしました。


★超長編小説殺人事件
売れる本を書くためにはどうすれば良いか。
編集者と作家が、本の内容(質)とは別のところで消費者にアピールする。
それは、本のページ数であり、厚さであり、重さである!?

オマケで売る本や雑誌が売れている現在ですから、
厚さや重さで差別化を図ることもありえる話だと、笑えない話なのですが、
最後の、「鉄板を入れた」  には… 参りました。
それにしても、ドンドンと変貌していくストーリー展開には笑えます。


★魔風館殺人事件(超最終回・ラスト5枚)
ラスト5枚に苦悩する作家。
作家の結末(超最終回)は、期せずとも満足のいくものとなったでしょう。
本当に命がけのものとなっていますから。

作家も命がけです。あ~あ。と、笑えます。


★超読書機械殺人事件
高機能読書マシン(ショヒョックス)のセールスマン、黄泉よみた。
作家がオタメシで使ったが最後(笑)、オプションのエブリューション・ユニットを付けて購入するようになる。
それは、既に作家になっている人の需要にとどまらず、
市場は作家になりたい人にも広がるものだった。

便利なものって、(画一的だけれど)慣れると必需品になってしまうんですよね。
黄泉よみたが、『笑うセールスマン』 の喪黒福造に思えました。(笑)
甘い誘惑には用心した方がいいのかな。
それとも、利用した方が良いのかしら。難しい選択です![ドコモ提供]

東野氏。締め切りや税金対策、売れるための小説を書くために、
編集さんと日々格闘されているのでしょうね。
そんあ日々から生まれた作品なのだと… 超納得。





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