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『熊ちゃん』 [おはなしのたからばこ]

『熊ちゃん』  文:今江祥智   絵:あべ弘士

P1010517

~ あらすじ ~

引越しの最中に見つけた青いリボンの掛かった箱。
最初に見つけたのは、麻里ちゃんでした。
お父さんもお母さんもお兄ちゃんも、引越しで大忙し。
たくさんの荷物で埋もれている箱を一人で取り出せない麻里ちゃん。
助けてもらおうと声をかけます。

通りかかったお父さんに頼んでみましたが、何を欲しがっているのか確かめもしないで、
「あとで」 と答えます。
お兄ちゃんも、同じでした。
「あとで」

ほうきで箱を引き寄せようと考えた麻里ちゃん。
ほうきは、お母さんが使っていました。ほうきを貸してと頼む麻里ちゃんに、
お母さんは、ほうきで何をしたがっているのか、確かめようともしません。
「あとで。今、忙しいのよ」 と、答えます。
「じゃあ、棒かなんかない?」 と尋ねる麻里ちゃんに、
「自分で探しなさい」 と答えます。

お父さんもお母さんもお兄ちゃんも、麻里ちゃんなんかいないみたいに忙しくしています。
麻里ちゃんは、引越しだけでなく、いつでもそうだったことを思い出します。
お父さんとお母さんは仕事に忙しくて、お兄ちゃんは、勉強に忙しかったのです。
麻里ちゃんのお話をゆっくり聞いてくれたことなど有りませんでした。
何でも、「あとで」 でした。
腹が立った麻里ちゃんは、荷物を蹴ってしまいますが、
その弾みで箱は麻里ちゃんの元に転がり込んできました。

箱の中には、、まっ白いフカフカの熊が入っていました。
その熊は、「こんなのが欲しい!」 と、思っていたとおりの熊ちゃんでした。
熊ちゃんを紹介しようとお父さんとお兄ちゃんに声を掛けますが、
引越しに忙しい二人は、麻里ちゃんの方をよく見ようともしません。

麻里ちゃんは、熊ちゃんを紹介出来ませんでした。
「ごめんね」 と、謝る麻里ちゃん。
お詫びに、熊ちゃんに、[かわいい]すみれちゃん[かわいい]という名前をつけました。
熊ちゃんは、「ウー、フー」 と、答えてくれました。[exclamation]

口が利ける熊ちゃんなのでした。
とっても嬉しくて、お父さん、お母さん、お兄ちゃんに、せいいっぱいの声を出してそれを伝えます。
が、誰も返事をしてくれませんでした。
お父さんが、ひと言つぶやいただけでした。
「やれやれ、この忙しいのに、ままごと遊びかね。子どもはノンキでいいなぁ」[たらーっ(汗)]

返事をしてくれない皆。
麻里ちゃんは、熊ちゃんに、また、「ごめんね」 と、謝ります。
熊ちゃんは、「ウー、フー」 と、答えてくれました。[exclamation×2]

いつの間にかホンモノの熊ほどの大きさになった熊ちゃんは、
麻里ちゃんを抱え込むと立ち上がりました。
「すてき。ホンモノみたいだわ」 と、つぶやく麻里ちゃん。
今度も、お母さんたちは、返事をしてくれませんでした。[たらーっ(汗)]

熊ちゃんは、ゆっくりと、そっと、麻里ちゃんを抱きなおします。
麻里ちゃんを抱いた熊ちゃんは、ゆっくりと家から出て行きました。
目の前には、深い緑色の森が、ぽっかりと口を開けて2人を迎え入れてくれました。[たらーっ(汗)]


  [ふくろ]  [いす]  [人影]


グリム童話では無いです。
単調な話かと思っていたら… とんでもない話になっていきます。
これは、大人のための本です。
少なくとも、子どもに話して聞かせる本ではありません。よね。[たらーっ(汗)]

子どもの話を(忙しいからと)聞かない大人。
答えてくれたのは、「熊ちゃん」 でした。
それは、最初は、小さい箱の中に入っていた熊ちゃんでした。
箱から出すと、麻里ちゃんと同じくらいの背丈になりました。
麻里ちゃんが、誰も相手をしてくれないと残念に思っているうちに… 熊ちゃんは大きくなっていきます。
最後は、相手にしてくれない大人を残して、出て行ってしまうという話なのでした。

なんという話でしょう。[がく~(落胆した顔)]
あなどれない話です。ヤバイです。

(有名な?)子どもの夢の話です。
夜中に冷蔵庫を開けるのですが、中には色々な美味しそうなモノが入っているのですが、
自分が食べたいものだけが無いという夢の話を聞いたことがあります。
豊かな生活になって、色々なモノで溢れている社会になったのに、
本当に欲しいモノが見付からないというか、手に入らないという苛立ちが伝わる夢の話です。

引越しで忙しくしている親子。
毎日、仕事や勉強で忙しくしている親子。
でも、何のために忙しくしているのか…
それは、親であれば、可愛い子どもとの生活のためだったはず。
子どもであれば、大きくなって良い仕事に就くための勉強のはずなのですが…
麻里ちゃんという大切なモノを置き去りにしているという話なんです。

話を聞いてくれる人。
自分のことを分かってくれる人。
そんな人やモノに、騙されてしまうことあります。
誘拐されたり、お金を取られたり…
宗教や勧誘にも似ている気がします。
熊ちゃんのように、自分の欲しいモノに変えることが出来るからです。

本当は、その大切な人と向き合うということが重要なことで、
忙しいとか、理由を並べ立てることをしないことが必要なのかもしれません。
そこに居るのに、居ないのと同じに扱われるなんてこと。
それは、人格否定であり、重要な問題を含んでいることなのだと… 
そこにこそ、様々な誘惑に付け入れられるスキを生み出すことになっているのだと…
現代社会の警鐘のように感じられる本なのでした。

ヒェ~! です。




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