『サウスバウンド』 奥田英朗 [読書]
面白かったです!
解説が付いている本が多いのですが、この本には付いていません。
そこで、ネットで検索。
ヤフーブックスでのインタビュー記事を見付けました。
http://books.yahoo.co.jp/interview/detail/31558492/02.html
作者本人の体験から書いたのかと思っていましたが、作者と父親の一郎は無関係のようです。
長男の二郎については、作者の同じ年齢の頃を思い出しながら書いたとか…
想像と伝聞でこれだけのしっかりとした作品を書き上げるのですから… 凄いものです!
さて、インタビュー記事から、
“世の中に対してひとこと言ってやれ”という思いはないし、
“現代社会を鋭くえぐる”みたいな気負いもないです。
わかったようなことを言われるのが一番腹立たしいから、
わかったようなことは書きたくないんですよ
驚きました。
一郎に言わせていたことは、
作者の考えとは無関係だったようです。
かなり、現代社会を鋭くえぐっていたと…
わかったようなことを言わしていたと…
色々な登場人物が、その人なりの考えというか、考えの根本になるような、色々なことを言っていたのに…
サスガですね。
それこそが、作家の醍醐味。なのですね。
素晴らしいです!
本の表紙を。上下2巻の角川文庫です。
「サウスバウンド」 とは、「南行き」 という意味です。
上巻で描かれている世界は、東京の中心、中野区での生活が舞台です。
都庁の見える都会のど真ん中。
元過激活動家であった父親(一郎)に振り回されながら生きている家族5人。
自分のことで精一杯で、家族がてんでバラバラにみえる家族です。
父親の過激な国家不要論や、周りを巻き込む色々な事件や出来事…
それは、まるで、国家の繁栄に伴う国民の悲鳴のように、
税金という金の搾取だけでなく、精神さえも(国家に)搾取されて喘いでいるような…
そんな社会に描かれています。
そして、東京での生活が破綻して向かった先が、南の果ての島。西表島でした。
下巻では、屋根にシーサーの乗った家、西表島での生活が舞台です。
強烈な中野での生活から、穏やかな西表での生活。
それは、心洗われ、文明と私利私欲にまみれた目からウロコが落ちるような生活でした。
ですが、開発という名の破壊が一家を襲います。
それが一郎、二郎、家族… バラバラに見えた家族を結びつけ、
土地というモノが何なのか、読者に問いかけてくる(ように思いました)。
作者のインタビュー時の言葉を借りれば、
こうやって書くことさえも憚れるのかも知れませんが、
どんなに、恥ずかしくとも、ぜひとも、書き残したい部分もあります。
二郎 「警察や企業に盾突く男を、痛快に感じ、面白がりはするものの、我が身に置き換えたりしない」
「テレビの前の大人たちは、一度も戦ったことがないし、この先も戦う気はない」
「戦う人を安全な場所から見物し、したり顔で評論する。そして最後に冷笑する。それが大多数の大人」
「お金が無くても不安じゃないというのは、なんて素敵なことだろう」
母 「人の物を盗まない、騙さない、嫉妬しない、威張らない、悪に加担しない」
「世間は、小さい。世間は歴史を作らないし、人も救わない。正義でもないし、基準でもない。
世間なんて戦わない人を慰めるだけのもの」
一郎 「卑怯な大人になるな。立場で生きる大人になるな」
中野区での戦いと西表島での戦い。
その違いを際立たせることで、明らかになることも有るのですが、解決されることはありません。
組織や国家という力の前では、人はとても無力です。
その無力さと、根底に流れる力強さ。
そのコントラストと空の青さと海の美しさ。
この素晴らしい預かり物をお金や権力のために破壊してしまう人々…
パンドラの箱を開けてしまった人類に残されたのは、
絶望ではなく希望だと…
信じたいと思いました。
解説が付いている本が多いのですが、この本には付いていません。
そこで、ネットで検索。
ヤフーブックスでのインタビュー記事を見付けました。
http://books.yahoo.co.jp/interview/detail/31558492/02.html
作者本人の体験から書いたのかと思っていましたが、作者と父親の一郎は無関係のようです。
長男の二郎については、作者の同じ年齢の頃を思い出しながら書いたとか…
想像と伝聞でこれだけのしっかりとした作品を書き上げるのですから… 凄いものです!
さて、インタビュー記事から、
“世の中に対してひとこと言ってやれ”という思いはないし、
“現代社会を鋭くえぐる”みたいな気負いもないです。
わかったようなことを言われるのが一番腹立たしいから、
わかったようなことは書きたくないんですよ
驚きました。
一郎に言わせていたことは、
作者の考えとは無関係だったようです。
かなり、現代社会を鋭くえぐっていたと…
わかったようなことを言わしていたと…
色々な登場人物が、その人なりの考えというか、考えの根本になるような、色々なことを言っていたのに…
サスガですね。
それこそが、作家の醍醐味。なのですね。
素晴らしいです!
本の表紙を。上下2巻の角川文庫です。
「サウスバウンド」 とは、「南行き」 という意味です。
上巻で描かれている世界は、東京の中心、中野区での生活が舞台です。
都庁の見える都会のど真ん中。
元過激活動家であった父親(一郎)に振り回されながら生きている家族5人。
自分のことで精一杯で、家族がてんでバラバラにみえる家族です。
父親の過激な国家不要論や、周りを巻き込む色々な事件や出来事…
それは、まるで、国家の繁栄に伴う国民の悲鳴のように、
税金という金の搾取だけでなく、精神さえも(国家に)搾取されて喘いでいるような…
そんな社会に描かれています。
そして、東京での生活が破綻して向かった先が、南の果ての島。西表島でした。
下巻では、屋根にシーサーの乗った家、西表島での生活が舞台です。
強烈な中野での生活から、穏やかな西表での生活。
それは、心洗われ、文明と私利私欲にまみれた目からウロコが落ちるような生活でした。
ですが、開発という名の破壊が一家を襲います。
それが一郎、二郎、家族… バラバラに見えた家族を結びつけ、
土地というモノが何なのか、読者に問いかけてくる(ように思いました)。
作者のインタビュー時の言葉を借りれば、
こうやって書くことさえも憚れるのかも知れませんが、
どんなに、恥ずかしくとも、ぜひとも、書き残したい部分もあります。
二郎 「警察や企業に盾突く男を、痛快に感じ、面白がりはするものの、我が身に置き換えたりしない」
「テレビの前の大人たちは、一度も戦ったことがないし、この先も戦う気はない」
「戦う人を安全な場所から見物し、したり顔で評論する。そして最後に冷笑する。それが大多数の大人」
「お金が無くても不安じゃないというのは、なんて素敵なことだろう」
母 「人の物を盗まない、騙さない、嫉妬しない、威張らない、悪に加担しない」
「世間は、小さい。世間は歴史を作らないし、人も救わない。正義でもないし、基準でもない。
世間なんて戦わない人を慰めるだけのもの」
一郎 「卑怯な大人になるな。立場で生きる大人になるな」
中野区での戦いと西表島での戦い。
その違いを際立たせることで、明らかになることも有るのですが、解決されることはありません。
組織や国家という力の前では、人はとても無力です。
その無力さと、根底に流れる力強さ。
そのコントラストと空の青さと海の美しさ。
この素晴らしい預かり物をお金や権力のために破壊してしまう人々…
パンドラの箱を開けてしまった人類に残されたのは、
絶望ではなく希望だと…
信じたいと思いました。
私もサウスバウンド大好きです♪
by ビビ (2008-07-13 21:15)
ビビさん、コメントありがとうございます!
初奥田英朗作品でした。
他の作品も、ぜひ、読んでみたいです!
一郎のような男性。迷惑だけど、魅力的ですよね。
もしかしたら、考え方や行動に筋が通っているからかも。
こういった、筋金入りの(?)人間には、惹きつけられてしまいます!
by 元気 (2008-07-13 23:29)