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『人のセックスを笑うな』 [読書]

ナオコーラ.jpg  河出書房新社  河出文庫
作者は、山崎ナオコーラ。
題名同様(?)、印象的な名前です。
短い小説なのですが、さらに短い短編、『虫歯と優しさ』 が納められています。

2編とも独白体の小説で、
『人の~』 は、美術の専門学校に通う男子生徒の、20歳年上の既婚講師との恋の始まりから終わりまでの話。
『虫歯と優しさ』 は、男の子だけど女の子な彼女が恋人(男性)と別れる話。

どちらも恋愛感情を描いているのだけれど、独白(ひとりごと)体なので、主人公以外の人の感情は、(読者が)窺うだけ。
あるときは主人公になって、あるときは周りの登場人物になって、いつの間にか引き込まれている感じ。
いつの間にか、ふんわりと中に居る。そんな感じです。
それは、やはり、文章の巧さなのですが、けっして技巧を凝らしているわけでなく、
人に添った、日常感覚と言葉で語られているからだと思います。
そう、読むことは、難しくない小説。分かり易い言葉で、分かり易い日常を描いています。
ですが、その内容は、けっして分かり易いわけではない。
中で描かれている恋愛の形態は、刺激的で先の見えない難しい形態だと思います。
男がいて、女がいて、恋愛して、結婚して…
そんな真っ当な(?)形態とは明らかに違う。けれど、真っ当とは、何なのか。
恋愛の対象が既婚者であったり、同性であったり、年齢差があったり…
それらは障害なのか、真っ当ではないのか…

真っ当な恋愛、正当な恋愛とは、種の保存が目的ということになります。
ならば、妊娠(する、させる)の時期を過ぎた男女の恋愛は、真っ当でないことになります。
恋愛とは、妊娠云々でなく、一人では埋められないものを埋めてくれるものだと思うのです。
ですから、真っ当かどうかなんてことは、恋愛には左右されないものなのかも知れません。
片思いも、高齢者の恋も、幼児の恋も… ”恋は恋” ですもの。[ぴかぴか(新しい)]
人は想うゆえに人であり、豊かな感情が豊かな人を作る気がします。
だから、「セックスを笑う」 ことの無意味さを題名にしたのかもしれません。
ていうか、「人のセックスを笑うな」 なんて言葉、小説には出てきませんが、ね。[わーい(嬉しい顔)]
そのあたりが、山崎ナオコーラさんの巧さだと思います。[たらーっ(汗)]

「命短し恋せよ乙女」 という言葉(歌ですが)もあります。
乙女でなくても恋をして、はばかることがない。そんな良い時代に生きているのだと想います。

さて、前置きが長くなりました。
『人の~』 は、色んなカタチの恋があり、SEXがある。
それは自然で真っ当(自然)なことなのだと… それで、このセンセーショナルな題名が付けられているような気がします。
人を好きになるということは、何がキッカケであるにせよ、
走り出したら止まらないものです。感情のセーブが効きにくいものです。
超特急で走り出し死ぬまでノンストップの場合もあるし、
鈍行どころか、徒歩で、寄り道だらけ、立ち止まってばかりの場合もあります。
どれが良いかなんて無いのです。どれも真っ当。
だから笑う(批判する?)なんてことは… 意味のないこと。
だけれど、イバラの道に向かって歩みだす人も、断崖絶壁のような場所に立っている人もいる。
私は、そう思うのです。

前に進むばかりが人生ではない。向きを変えることも穴を掘る(?)ことも可能なのです、よね。
誰の人生でもない。自分の人生です。
最期のときに、「色々あったけど、面白かったなぁ」 と思えたら、
そのトキに、ドブにハマっていても、汚物だらけでも… 許せる気がするのです。
そう思えるように、誰かを恨むことなく生きられたら良いなぁ。そう思います。







以下、少々辛口のコメントになること、お許し下さい。

何で生業をたて、何が目標で生きているのか分からない。
自分がどこに向かい、何が出来、何をしようとしているのか分からない。
だけども、心に空いた空間を埋めれているように、SEXの相手がいて、体を重ねることが出来る。
SEXは、麻薬か何かですか?
SEXを逃げ場所にしてはいけないと思います。

「人のセックスを笑う」 などという愚は犯しませんが、
セックスは、(相手を知る)手段であって目的ではありません。

主人公の ”磯貝みるめ” は、20歳年上の ”猪熊サユリ” の目じりのシワが可愛いと思う。
下っ腹の出た腹が可愛いと思う。
手入れをしない髪も肌も愛おしいと思う。
それは、責任を伴わない愛しさに思えてならないのです。
共に年を重ね、世間に対する努力も覚悟もない無責任さ。
あおれgただ、自分の心の空白、閉塞感、将来への不安を埋める(SEXの)ために相手が存在している気がする。
私は、それが良いとか悪いとかを言いたいのではないのです。

作者の山崎ナオコーラ氏は、そのあたりを上手く小説にしていると思います。
だから、2004年第41回文藝賞を受賞に華々しくデビューしているのです。
人の心を揺さぶる小説とは、心に響く小説です。
自分が主人公と一体になることは、心に響くことでもあるのです。
年齢や経験、環境を超えて、読むうちに、いつの間にか主人公になっている自分を発見する。
そんな小説が、人の心を揺さぶる良い小説なのだと思います。
ですから、今の時代にあった、時代に相応しい小説で、受賞も納得な小説だと思います。

今の時代が、こういうフワフワした若者で溢れるということは…
誰も責任を取らない。覚悟の無い時代を象徴しているように思えます。
それは、将来に夢を持てる若者を増やす努力が足りなかったのだと…
そんな内容の通知表を渡されたようなのでした。

どうなるのだろうと不安になるだけでなく、
どうすれば良いのだろうと、何の力も無い私さえも、考えてしまったのでした。




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コメント 3

わいきき

うわっ

露出癖があるのかと思わず覗いてしまいました(笑)

by わいきき (2008-10-29 20:17) 

元気

露出癖!?

ああ、題名から… (赤面)
なにはともあれ、ブログを覗いて下さったのは嬉しいことです。(笑)

立ち読み出来るくらいに読みやすい本です。
一度、本屋でオタメシあれ。 (ォィォィ!?)
by 元気 (2008-10-29 23:46) 

mirai

> 恋愛とは、妊娠云々でなく、一人では埋められないものを埋めてくれるものだと思うのです。
ですから、真っ当かどうかなんてことは、恋愛には左右されないものなのかも知れません。
片思いも、高齢者の恋も、幼児の恋も… ”恋は恋” ですもの。
人は想うゆえに人であり、豊かな感情が豊かな人を作る気がします。


はい、私もそう思います。
まだ読んでいないのですが、一度読んでみたいですね。

でも、「あ~、恋がしたい」なんて思うかな(笑)
by mirai (2008-10-30 05:02) 

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