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NHK教育 ETV特集 キューバ革命 50年の現実 [テレビ]

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2009年1月1日、キューバ革命によりカストロ政権が誕生してから半世紀を迎える。この間、キューバは米国と国交を断絶し、経済制裁を受けながらも独自の社会主義路線を堅持してきた。キューバ社会を36年間、記録し続けてきた一人のアメリカのジャーナリストがいる。ジョン・アルパート(60)。彼は72年、国交のないキューバにボートで渡り、革命後のキューバの撮影に初めて成功した。以来、祖国の敵国キューバの人々の素顔を撮影し続けてきた。アルパートはカストロ議長のインタビューにこれまで3回成功。36年間に渡って記録し続けてきた映像は革命後のキューバ社会の変遷を伝える貴重な記録である。

革命50年目を迎えるにあたり、アルパートは、今年暮れからキューバに入り、これまで記録し続けてきたキューバの人々の姿を追うことにした。革命によって土地を手に入れた農民ボレゴ三兄弟。ハバナの旧市街で出会った少女カリダット。ソ連崩壊後の経済危機の中、盗みで生計を立てていたルイス。彼らの記録は革命から半世紀を経たキューバ社会の鏡でもある。キューバ経済で急速にプレゼンスを増す中国、格安な原油提供でキューバ経済を支える反米国家ベネズエラ、観光開発での積極的な外資導入・・・。半世紀前、革命政権が目指した平等な社会、しかし国民の間には深刻な経済格差が生まれ、豊かさを求める国民の海外亡命はやむことがない

番組はビデオジャーナリストの先駆者ジョン・アルパートが36年間、記録し続けている映像と最新の映像を交えキューバ社会の変遷を伝える。スタジオにはジョン・アルパートを迎え、藤澤秀敏解説委員長とともにキューバ革命とは何だったのかを検証する。

出演者:藤澤秀敏解説委員長、ジョン・アルパート

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とても興味深く視聴しました。
映像を基に、NHKの藤澤秀敏解説委員長が質問し、ジョン・アルパート(以下、ジョンと省略)が答えるという番組構成でした。
ジョンは、革命後のキューバの変化を36年もの長いスタンスで取材映像化し、
(他の題材を含めて)エミー賞を15回も受賞した著名なジャーナリストだそうです。

カストロのインタビュー場面では、カストロのユーモラスで素朴な人柄が表れていたように思います。
厳格でも威圧的でもない素のカストロは、サービス精神旺盛で、誰に対しても敬意を持っているように思えました。
(自分に対して自信を持ち、人に対して臆することがないということなのかもしれませんね)

演説のために訪れた国連。
その宿泊先(スイートルームでない!?)の中まで取材を許し、質問に答えるカストロ。

「国連前の支持派と反対派のデモをどう思いますか?」 

というジョンの直球の質問にも即答します。

-自分に対して反対している人を賞賛する。なぜなら彼らは活動家だから。熱心に活動しているということだからね。
-私を支持してくれる人には感謝する。彼らには更なる賞賛を送りたい。彼らは勇敢だからね。

気さくで会話を楽しむカストロに対して、ジョンは、

「カストロから、誰と話すときでも恐れずに話すことの大切さ、ジャーナリストとしての基本姿勢を学んだ」

と語ります。さらに、オバマ大統領の就任とからめて、熱く語ります。

「カストロが成し遂げたことは大きな意味を持っています。革命はキューバという国を大きく変えました。
 それまでなかった学校や病院が建てられ、希望に満ち溢れているように思えました。
 今、アメリカは、オバマ政権となり、今までとは違う良い方向に向かうという希望が満ちています」

革命ではないけれど、大統領が変り、新しいアメリカへの期待感が希望となっているようです。
(それは、NHKの番組放送の意図でもあるのかもしれませんね)
革命後50年で、キューバがどのように変ったのか。
革命がもたらしたものを、キューバに暮らす人々の変化を映像で見せてくれる番組でした。

さて、番組説明文のままでは誤解されかねない重要なこと(太字部分)を訂正しておきます。



>革命によって土地を手に入れた農民ボレゴ三兄弟。

元々、多くの土地を有していたボレゴフャミリー(男3人、女一人)です。
革命による農地改革により土地の8割が国有化され、ボレゴフャミリーに残されたのは残りの2割でした。
平等な社会を目指した革命は、彼らから土地を奪う結果となりました。
キューバ革命の意味を問いかけたジョンに対して、

-国のためになるならと農地改革にも賛成しました。農作業に必要なものは、国が何でも与えてくれます。だから私たちも国のために働くのです。

さらに、バティスタ政権時代には、そんな援助はありましたかという質問に対して、

-いいえ。自分たちで、全て買っていました。

と、答えています。
ファミリーは、農業を続けることが出来て、生活が出来るなら、幸せだと考える勤労を厭わない善良な国民なのだと思います。

>半世紀前、革命政権が目指した平等な社会、しかし国民の間には深刻な経済格差が生まれ、豊かさを求める国民の海外亡命はやむことがない。

深刻な経済格差の原因は、アメリカによる経済封鎖の強化に他なりません。
ソ連が崩壊し、援助が激減した今、キューバは深刻なモノ不足にあえいでいます。
キューバを追い詰めるための経済封鎖の強化に対して、政府が出した苦肉の策が観光産業の活性化でした。
それにより外貨を獲得する者とそうでない者の格差が生まれています。
さらに、モノ不足による経済の悪化から(メキシコを経由して)アメリカに出稼ぎに行き仕送りをする者がいます。
彼らの仕送り(ドル)は、外貨を持つ者(格差)を生み出しているのです。
若い世代ほど、モノが無いことに対して不満をつのらせます。
先のボレゴフャミリーは、ジョンと出会った当時長男のアンヘルは66歳。一番年若いリロ(妹)は、50歳だったのです。
革命後50年経ちました。
持てる人が国のために手放したモノ(土地)の代わりに手に入れたもの(平等な社会)でしたが、
革命を経験しない新しい世代がモノを求める気持ちには隔たりがあり、アメリカの経済封鎖が功を奏している現実。
モノが豊かな資本主義社会を理想郷のように憧れるキューバ人が移民(海外亡命ではないです!)を望む気持ちは止められないでしょう。
「豊かさを求める国民の海外亡命」 と記載されていますが、豊かさを求める貧しい国民がするのは、亡命ではなく、経済移住です。
身の危険から逃れるための亡命ではありません。
経済移住をした人々が、その移住先で、どのような生活をするのか、とても気になることろです。

ですから、番組を観終えて、とっても気になるというか不思議な印象を持ちました。
キューバからアメリカに亡命、あるいは移住した多くの人の取材が全く無いことについてです。
それらの人々がアメリカという社会で何を思い、どういった生活をしているのか…
とっても知りたいと思いました。

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aneurysm

独立した国が必ずしも”幸せ”な状態では無い現実は、
厳しいですね。
by aneurysm (2009-02-11 09:46) 

元気

aneurysmさん、ナイスとコメントをありがとうございます。

アメリカの介入によるスペインから独立(1902年)後は、アメリカの保護国となり、アメリカとバティスタ政権の富の独占により国民は(搾取による)貧困に喘いでいたのです。
だからこそ、革命が起き革命政権となり、(アメリカのへの富の流出を許さない)社会主義国家への道を推進することとなりました。

カストロのよる革命(1959年)後50年に当たる今年、番組が放送されましたが、
アメリカの思惑と利害に翻弄されながらも、主権を守り続けた独立国キューバという見方も必要です。
合法的な移民が許されている状況で亡命という言葉を使うアメリカ。
経済封鎖による貧困で移民希望者を増しながら、移民の受け入れ人数を制限し、さらなる貧困を画策するアメリカ。
アメリカに歯向かう(思惑に添わず、富の流出を許さない)には、独立国に相当な覚悟が必要です。

日本が、豊かな社会を維持しつつ主権を守り続けるには、キューバ以上のシタタカサが必要なのだと思いました。
勤勉で賢明な日本の国民性が幸いすることを願うばかりです。

by 元気 (2009-02-11 12:34) 

haji

元気さんお邪魔します。

いつもながらとってもわかりやすいのがいいです。
そしてカストロが、日本のサヨクなどとは比べるのもおこがましい、本物の左翼・革命家であることもよくわかります。売国ではないわけですから。

>アメリカの思惑と利害に翻弄されながらも、主権を守り続けた独立国キューバという見方も必要です。
ですから、番組を観終えて、とっても気になるというか不思議な印象を持ちました。

>キューバからアメリカに亡命、あるいは移住した多くの人の取材が全く無いことについてです。
それらの人々がアメリカという社会で何を思い、どういった生活をしているのか…
とっても知りたいと思いました。

さすがです。脱帽します。多くの方がこういったものの見かたをしてくれればいいのに。と思いました。

郵政関連お疲れ様です つ且
睡眠をとってからじっくりと読みたいと思います。
当方ブログ、産経を見たら訂正しなければならない箇所が早速出てきました…それも後でしますね。

by haji (2009-02-14 01:19) 

元気

hajiさん、コメントをありがとうございます。

革命は手段であって、目的ではありません、よね。
革命後の国政について、考えさせられる番組でした。

>郵政関連お疲れ様です

遅遅としてます。(恥)
衆議院TVから2月5日と9日の筒井氏の質問や答弁を書きおこした資料も必要です。
残念ながら、予算委員会の会議録、最新は、2009.2.2 なのです。

前後の答弁等、話の流れ抜きに安易な麻生首相批判は出来ないと考えています。
今現在、いくつか資料として太字や色文字だらけでアップしていますが、
まとめとしての記事をアップする頃には、太字や色文字はなくし、簡潔な資料の形に戻す予定です。(笑)

今後ともよろしくお願いします。



by 元気 (2009-02-14 18:28) 

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