『あの空をおぼえてる』 [映画]
会社の同僚と4人で見て来ました。
一人は、最初から2時間泣きっぱなし… 目を腫らし、頭が痛い…
一人は、クライマックス。学校の先生友人がトンネルを入って行く所で、初めての涙…?
一人は、座席と画面との目線が合わず腰が痛く辛かった…
私はといえば、心の傷のシーンが描かれる場面で、じんわり…
竹野内豊、明暗を見事に演じ分けてました。
「明」 のシーンでは明るい色の服を着、喜びや躍動感がほとばしっていましたが、
「暗」 のシーンでは黒のアウターしか着ず、滞ったオーラを振りまいていました。
若いオットコマエのお父さんから、一気に老け込んだ鬱陶しい父親に。
それから、辛い事を経てきたからこその優しさを表現していたような気がします。
順風満帆な人生では難しい深みや悲哀を醸し出していたと思いました。
水野美紀。綺麗で賢く優しい母親でした。
女性(母親)としての細やかな動き、配慮、気持ちの動きが、とても良かったです。
身を切られるような辛さを耐え、健気に頑張る母親を気負うことなく演じていました。
妹役の吉田里琴。
素晴らしい笑顔と機敏な動き。
「動」 の役柄を愛らしい表情と愛おしい動作で存分に表現していました。
周りよりも自分の気持ちを優先させる 天真爛漫な 「子ども」 役。
それは、それは… アッパレでした。
アニ役の広田亮平。
「動」 の妹に対して、「静」 の兄役を見事に演じていました。
「大人になりかけた子ども」 として、
周りを気遣うことで自らが傷つくという、行き場の無い悲しみを表現していました。
ケナゲさ、不憫さが… 愛おしくて、哀しかったです。
「なぜ、自分たち家族が(こんな不幸に見舞われたのだ)?」
「なぜ、絵里奈なんだ?」
それは、自らの受けた不幸の理由を問いかける言葉でした。
他の家庭なら、ツゴウが良いというワケでは無いこと。
絵里奈でなく英治ならツゴウが良かったというワケでは無いこと。
そんなことは十分に分かっていても、出てしまう言葉でした。
理不尽に思える不幸。守りきれなかったという後悔を基に、追い詰められた父親から溢れ出た言葉でした。
受容すること、乗り越えること。そして、(神のみに専売特許ではなく)赦すこと。
それは頭では分かっていても、心で受け入れることは難しいことなのです。
想い出の品を箱にいれることは、けっして思い出を閉じ込めることではないのです。
後悔や思い出に未来が押しつぶされてしまわないために、
心の整理をするように、思い出を抱しめながら、想い出の品を整理する。
思い出を心の中に抱しめながら歩みだす。
その軌跡を映画という映像を通して見せてくれた。そんな気がしています。
絵に描いたような幸せな家族を突然に襲う不幸。
それは、残された家族それぞれの心から罪悪感を生み出しました。
妹を娘を守れ切れなかったという後悔です。
掛け替えの無い大切なものは… 代わりのきかないものだからです。
ですが、無くなってしまったのではないのです。
兄が見ていた妹の残像やイメージが心の中に存在し続けているように…
心に中に生き続けているのです。
妹が最後に言った、
「さようなら」 ではなく、「行って来ます」 という言葉。
それが、この作品の良さなのだと、私は思いました。
「あの空を覚えている」
あの空とは… 妹を見送った空であり、笑顔で手を振った空なのです。
それは、けっして過去に縛られて身動き出来ない空ではないこと。
そして、その(あの)空は、無限の広がり(未来)と通じているのです。
絵里名の笑顔を見るだけでも… お金を払って観る価値がある映画だと思いました。
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