SSブログ

『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』 [映画]

オバマ大統領の就任演説から、(一部引用)
勤勉と正直、勇気とフェアプレー、寛容と好奇心、忠誠と愛国心といった、我々の成功が依拠する価値は古くからのものである。これらは真実である。これらは我々の歴史を通じ、進歩の静かな原動力であった。必要なのは、これらの真実に報いることである。
今、我々に求められているのは、新たな責任の時代、すなわち、米国民のそれぞれが、自らと国家及び世界に対し義務を負っていることを認識することである。困難な任務に対し全力で奉仕すること以上に我々の精神を満足させるものはないということを強く認識し、嫌々ではなく義務を果たすことである。これこそが市民権の代価であり約束である。これこそが我々の自信の源である」

          [ぴかぴか(新しい)]   [バー]   [TV]   [バースデー]   [リゾート]   [ぴかぴか(新しい)]     

アメリカは、新しい国です。(イギリスからの独立承認。1783年9月3日)
1950年代、郊外の芝生のある素敵な家に住み、電化製品と車を持ち、子どもと妻のいる生活。
それは、経済が飛躍的に成長発展していく中で、(家庭、社会の)役割が明確になっていくことと無関係ではありません。
サブプライムローン問題で、世界中に金融危機が波及していますが、
家を持つことは、時代を超えた憧れであり、ステータスなのだと思います。

オバマ大統領の就任演説の言葉からは、
アメリカ人としての責任、義務、自信と誇りを取り戻そうという決意のほどがうかがえます。
しかし、その責任と義務のジレンマこそが自信と誇りを揺るがすことになるかもしれない。
そんな一組の夫婦を描いた映画なのでした。

             [かわいい]   [かわいい]   [かわいい]   [かわいい]

映画の舞台は、1950年代半ば。アメリカ、コネチカット州。
ブルーカラー(肉体労働者)の世帯とは違う閑静な住宅街。「レボリューショナリー・ロード」 
その一角にある特別な一軒家。少し高台に立てられた可愛くて素敵な白い家。
高学歴で美人の妻と有能でオトコマエの夫。そして可愛い二人の子ども。
誰もが羨む特別な家族。[ムード]
さて、副題の 「燃え尽きる」 とは… [どんっ(衝撃)]

扉0001.JPG

原作は、リチャード・イェーツのセラー小説です。(未読)
脚本も、とてもよく出来ていて、眠る間もないほど(笑)、どんどんと話に引き込まれていきます。
家族の話ですが、主として夫婦の話です。
夫役は、レオナルド・ディカプリオ(フランク)。
妻役は、ケイト・ウィンスレット(エイプリル)。
それは、もう、心の機微、葛藤を見事に演じています。[ぴかぴか(新しい)]
誰がフランクを演じられるか… レオナルド・ディカプリオ、しかいない。[黒ハート]
誰がエイプリルを演じられるか… ケイト・ウィンスレット、しかいない。[黒ハート]
そんな風に思わせてくれるほど… 素晴らしい映画でした。[揺れるハート]

レボ4.jpgレボ3.jpgレボ1.jpg
レボ2.jpgレボ6.jpgレボ5.jpg

ただ…
この映画を観にいったカップルは、別れることになる。とか。(ウワサです)
一理ある。かも知れません。
心の奥底に秘めた思い。それは、男と女では違います。
さらには、女同士、男同士でも違うのです。
あまり言及すると… 譲らないで、真実を追究し過ぎると… ケンカして、破局。
なんてことになるかも知れないです。
たかが映画、されど映画です。ご用心を。



以下、ネタバレです。ご注意願います。 
フランク(レオナルド・ディカプリオ)の出勤風景。
皆が白いシャツ(ホワイトカラー!)の背広(スーツ)に帽子です。
皆が郊外の家から車で駅に行き、駅から会社のある都会に吐き出されて(?)います。
出勤時間も退社時間もほぼ同じ。だから通勤ラッシュになるんですね。
没個性ですから、フランクがどこにいるのか…
通勤集団の中では、すぐに見つけることが出来ません。(ウマイ演出ですねぇ)

この映画では、色々な機会(チャンス)が訪れます。
エイプリルにとってもフランクにとっても、選択の機会が訪れるのです。
そのとき、どういう選択をしたか。
それが、その後の展開への布石となるのです。
では、違う選択をしたらどうなったのか…
違う展開で、違う結末が待っていた、のかも知れませんし、
もっと別の悲劇が訪れていたかも知れません。

容姿に恵まれ、知性に恵まれ、運に恵まれていた夫婦。
それゆえの悲劇といえば、そうなのかも知れません。
生きることで精一杯のフツウの夫婦なら… 
互いに助け合って、今、手に入れていることの幸運に感謝し、
更なる展開を求めなかったのかも知れません。
それは、非凡ゆえの悲劇だったのかも知れません。
ですが、人は、いつかは死ぬものです。
たとえそれが望まぬ結末(死)で、意識のない状態の結果だとしても、粛々を受け入れるしかないものです。
ならば、精一杯生きて、燃え尽きる。そういう選択もまた、単なる悲劇などではなく、人生としてあるのかも知れません。
自分で選択した結果。それが事故であったとしても、選択したのは自分自身であったなら…
燃え尽きるように生きた。そういえるのかも知れません。

家庭を維持することに対する責任が義務と感じられたとき、
絶望的な閉塞感からの開放への希求が始まったのだと思います。
(今の幸福しか考えられないということは… 幸福なんですね!)

さて、最後の言い争いの翌朝。
フランクがキッチンに降りて来た際、エイプリルは、静かに朝食の用意をしていました。
私は、このシーン。スゴイと思いました。
叫ばないように、口を押さえ、泣かないように(?)、しっかりと目を見開きました。
本当は、慟哭したかったのです。
これほど、エイプリルの思いを秘めたシーンは無いからです。
フランクを送り出した後、エイプリルは、食器を洗う手を止めて嗚咽します。
そして、子ども達を預かってもらっている家に電話をかけます。
自分のしようとしていることの愚かさ。罪深さ。
それは、エイプリル自身が身を持って償うのです。
エイプリル自身、自覚していたと思います。
エイプリルの覚悟。実は、我がままであり、甘えなのでした。
責任とは対局にある意地と自己満足に過ぎなかったのです。

数学者ゆえに、矛盾を許せず心を病んだジョン(マイケル・シャノン)。
彼には、心を曇らせている欲望の正体が見えていたのです。
ですから、「この手でなくて良かった」 と、エイプリルに囁いたのです。
エイプリルは、この言葉の意味を悟ろうとはしませんでした。
意地という心の曇りが障害となったのだと思います。
フランクもエイプリルも、自分を愛する以上に相手を愛することは無かったから、
欲という心の曇りが晴れることが無かったのだと思います。

2人は、おそらく、自分の存在以上に相手を愛していると考えていたかも知れません。
大切な人の命を自分の命と引き換えにすることが出来ても、それは愛ではなく自己満足に過ぎないのです。
自分を殺すことなく相手を生かす道。
その道を選ぶためなら、どんな犠牲(家や地位)を払うことも出来たはずなのです。
誰かの犠牲の上には幸福は無いのです。
責任とは、誰かの不幸の上にあるものではありません。
誇りとは、自らに恥じない行動の結果生じるものです。

子どもの命を犠牲にして、夫婦の幸福は築けないし、
妻の犠牲の上にも夫の犠牲の上にも幸福は築けないのです。
誰かの自己主張を受け入れることで何かを諦めるとしたら、
諦めた思いは、諦めさせた者に報復することになるのです。不幸の連鎖です。
(出来ることなら、幸福の連鎖の方が良いですよね[かわいい]

才能ゆえに時代に飲み込まれた夫婦の話なのかも知れませんが、
現代日本においても、誰かの犠牲の上に幸福があると考えるなら、
それは、海辺で、砂で作った城に過ぎないと… 私は、思います。

フランクは、「話す」 ということを 「説得」 と考えている営業マンでした。
エイプリルは、女優を夢見ていたのに、演技にのめりこめない主婦に過ぎなかったのです。
フランクが、言葉をかけずに、ただ、妻の傍から離れない夫だったなら、
エイプリルが、妻としての演技をやりとおすことの出来る女優だったなら、
もしかしたら、結果は違っていたかもしれません。

2人の子どもと、お腹の中に12週だけ生きていた赤ちゃん。
この3人の命をエイプリルは、自分の責任で犠牲にしました。
命こそ、何をおいても犠牲に出来るものではないのに。です。
その代償は、あまりに大きく、残された者にとっても辛いものになりました。

フランクは、自分の出世と引き換えに、エイプリルの夢を葬りました。
そして、エイプリルの心を失い、命さえも失ったのです。
フランクは、生きている間、自分を責め続けるに違いありません。

何かを犠牲にしての幸福などはありません。
ともに生きる道を探ることが、夫婦の務めであり、子らへの責任であり、義務なのだと… 私は、思いました。

浮気のことや、ジョンのこと、隣人夫妻、不動産夫妻、同僚、社長。
色々と書きたいことはありますが…
色々なことは、観た各人が考えるということも楽しみなのだと思います。
ですから、これ以上余計なことは、書かないことにします。
(十二分に書いたけど… [たらーっ(汗)]

とても珠玉の映画だと思いました。
良い映画に出会えて、とても良かったです。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

禁煙できるかな?『JUNO/ジュノ』 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。